全国トップクラスの移住者数を誇る町で活躍する、人と地域のパイプ役
お話を伺ったのは
川村 幸司さん
土佐町生まれ。中学・高校時代は高知市内で進学校に通う寮生活を送る。大学時代は京都で過ごし、中国への留学や無一文で臨んだお遍路めぐりなどを経て、卒業後は京都の田舎で自給自足の暮らしをしながら福祉関係の仕事に就く。京都で出会ったパートナーと結婚後、子どもが生まれたことを機に地元土佐町へUターン。移住後は夫婦でカフェ経営をする傍ら、移住者サポートの任意団体に誘われボランティアをはじめる。その後NPO法人として本格始動し、土佐町、大豊町、本山町、大川村の4つの地域の移住者をむすぶ職員として地域を見守り続けている。
全国の移住者を魅了し、選ばれ続ける嶺北地域
年間移住者数30〜40組と、全国でもトップクラスの年間移住者数を誇る高知県嶺北地域。過疎地域では類をみない数の移住者がこの土地を選ぶ背景に、ひとりの男性の存在がある。NPO法人 れいほく田舎暮らしネットワークの事務局長をつとめる川村幸司さんだ。
NPO法人 れいほく田舎暮らしネットワークは、嶺北地域へ移住を希望する人と地域をつなぐパイプ役を担っている。時には県外に赴き移住を考える人に地域の魅力を伝えたり、空き家紹介など移住後の暮らしもサポートしている。
暮らしを考えた先にある移住
土佐町出身で関西での進学、就職を経てUターンでこの町に帰ってきてから川村さんがこのNPOと関わるようになって約10年。移住者を見てきて感じる変化を尋ねると「10年前は、農業をしたくて移住してくる人が多かった。だけど東日本大震災以降は、農業とか仕事を求めてくるというより、”暮らし”を考えて移住を決める人が増えたなという印象があります。」と答えてくれた。
人と人を繋いでいく
嶺北に限らず、東日本大震災をきっかけに暮らしを考え、都会を離れ地方への移住を選択する人は増えている。全国的に地方移住が増えるなかでも、特に嶺北は個性豊かな人が集まっているエリアのひとつだ。「有名ブロガーさんの影響などもあって、確かにいま嶺北にはエッジのきいた人もどんどん集まっています。ものすごい経歴をもってるとか、まったく新しいビジネスモデルに挑戦してるとか。おもしろい事をやっている人がたくさんいます。」
移住者が増え、多様性に富んだ人間が集まるようになった今、NPO法人 れいほく田舎暮らしネットワークの役割について川村さんは「自分たちの使命としては、やはり地域の人が置いてけぼりにならないよう、しっかり人と人を繋いでいくことが大事だと思っています。」と語ってくれた。
移住後こそ必要とされる「パイプ役」
多くの移住サポートNPOが移住者を呼び込むまでで完結するなか、れいほく田舎暮らしネットワークはむしろ移住後のパイプ役として大きな役割を果たしている。「地域で新しい風を吹かせるのも、大胆な挑戦ができるのも、今までこの地域を守ってきた人たちの存在あってのこと。新しい文化や人が入ってくると、これまで暮らしてきた町が変わってしまうんじゃないかとか、どうしても不安や恐怖がでてきます。新しいものが入るという事は、それまでの一部を譲り渡したり、自分たちの大切な何かを分けあっていかねばならない事もでてくる。だけどそれは信頼がないとできない。この人になら、と思ってもらえる信頼関係が大切です。」
移住者がこの町で心地よく暮らせるよう、信頼をつなぐ
川村さん自身、NPOで活動するなかで、やはり人を動かすのは信頼関係だと実感していた。「僕の場合、この町でずっと暮らしてきた親や親戚の力に救われました。狭い田舎で、昔は”〜の息子”と言われるのが嫌で一度は町を出ました。けれど、移住者をつなぐ活動をしていると”あいつの親戚だからちょっと話聞いてみるか”とか、”知り合いの息子だから協力するよ”という事がたくさんあった。それって信頼関係ですよね」
町のひと達の協力や理解を得て、新しい文化や人が町になじんでいく。移住者と町をつなげる。移住者同士をつなげる。そして地域の人と移住者をつなげる。そのあいだには、いつも信頼関係があることを川村さんは教えてくれた。
今回の訪問先
れいほく田舎暮らしネットワーク(農村交流施設おこぜハウス内)
〒781-3521
高知県土佐郡 土佐町田井1667番地
電話番号:0887-72-9733
営業日時:月–金/9:00–18:00
交通手段:車の場合/高知自動車道大豊ICから15分
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